電子契約とリーガルテック

2022/10/05

新型コロナによりリモートワークをする人が急増しました。これにより電子契約の仕組みを導入する会社も増加しています。またデジタル・トランスフォーメーション(DX)が進んでいることもあり、契約書に必須だった捺印という作業も大幅に減少しています。その結果、捺印のためだけに出社しなければならないような状況も改善されつつあります。

 

2021年(令和3年)1月に電子契約締結に関する地方自治法施行規則が改正され、地方自治体も電子署名法に基づく電子署名を用いて契約を締結できることになりました。これにより、印紙を付した契約書を取り交わしていた相手先の民間企業も、電子契約が結べるようになっています。

 

今後も更に電子契約の利用が増えていくでしょう。最近の電子契約について、その動向を調べてみました。皆様の会社の電子契約導入の際の参考にしてください。

目に見えて増加した捺印不要の申請書類

押印不要の申請書や書類について身近なものは、地方自治体で申請する各種書類でしょう。例えば住民票などを申請するときは申請書に捺印が必要でした。しかし、2020年11月に行政手続きにおける押印廃止が発表され、多くの行政手続きで押印の必要がなくなりました。

 

給与をもらっている会社員の場合、毎年、年末近くになると年末調整に関する書類を記載していたと思います。しかし、この押印廃止により2021年の年末調整から年末調整の書類の押印欄はなくなっています。

 

押印が必要になるのは、印鑑証明書を必要とする手続き関連の書類です。車や不動産の購入等、金額が大きなものに関する手続きは押印が必要なケースが多いです。ただし、不動産に関わる取引は2022年5月から電子契約が認められ、電子契約で契約書を交わすときは押印の必要はなくなりました。

電子契約の仕組みとは電子契約書の締結だけ?

契約に関わる部署や法務の担当者は契約書を作成し、もしくは受け取って管理するだけが業務ではありません。契約書に関わる業務は多岐にわたります。契約書締結だけを電子化しても、その他の関連業務が電子化と結びついた作業になっていないと、逆に手間が増えてしまうこともあります。具体的にはどのような業務があるのでしょうか。

 

電子契約:契約書の作成から締結まで、契約締結の一連の業務
契約書内容確認:契約書の内容をチェックし、不利な条文や欠落条項、抜け漏れなどを確認
文書管理:締結書類や付帯書類をデータ化し管理する
申請・出願:商標や意匠など、企業活動におけるさまざまな申請や出願
リサーチ検索:過去の判例など、法律に関わるさまざまな資料を検索
弁護士検索:相談したいトラブルに対し、その分野の専門弁護士を確認し相談する
法務マネジメント:契約含む、法的に関わる業務全般
フォレンジック:M&Aなどで相手先の不正情報や資料をチェックする行為
労務・総務:法的な視点から労務管理や総務にアドバイスをする

 

この中で特に電子契約と深く関連している業務は「契約書内容確認」と「文書管理」になるでしょう。

リーガルテックとは

リーガルテックという言葉を初めて聞く人もいるかもしれません。リーガルテックとは、法律(Legal)と技術(Technology)を組み合わせた言葉です。訴訟が多いアメリカでは様々な法的な活動が求められていて、それを効率的に行うことで訴訟に勝てるようにしたい、ということから生まれました。

 

契約締結だけではなく、様々な法的な作業を全体的にカバーしようというものです。つまり、法律が関連する業務全般をサポートするものをリーガルテックと呼び、電子署名や書類作成など契約に関わるサービスもその中に含まれます。日本の場合は、どちらかというと契約書の締結のシステムが中心となっていますが、さまざまな法的なサポートをシステムで行うことを意味しています。

 

リーガルテックの市場規模は急速に拡大しており、2019年の228億円(推定)から2023年には353億円(推定)になると推定されています。(矢野経済研究所:2019 リーガルテックウォッチより)
リーガルテックのサービスはコロナによるリモートワークの拡大、政府によるDXの推進、不動産取引における電子契約や重要事項説明書の電磁的方法による交付の解禁等によって、更に拡大していくと思われます。

 

市場の拡大によって、様々なシステム関連の会社がこのリーガルテックのサービスを開始していて、一般のユーザーにとって必要なサービスを選定することが難しくなっています。そのためにそれぞれの事業者がどのようなサービスを中心にしているかが人目でわかる「リーガルテック・カオスマップ」というサービス提供会社を一覧できるマップも発表されています。自分の会社がどの部分のサポートを必要としているかを明確にすることで、サービスの提供会社を絞り込むことができます。

電子契約システムの普及率

電子契約のシステムを導入している企業の比率は調査の会社によって大きく違いあります。4割未満とする調査から7割弱とする調査まであり、正確な数字を記載することはできませんが、すべての調査がここ数年で急激に伸びたという結果になっています。業種別に見ると、もっとも導入が進んでいる業種は金融・保険業、情報・通信業で、遅れている業種は公共やサービス業のようです。

電子契約のメリット

1)契約書の締結の迅速化
電子契約の普及が加速している理由には、導入のメリットが大きくなっていることがあります。すでに記載したように、新型コロナウイルスの流行によるリモートワークの拡大、政府のDX推進、法改正など要因はいくつもありますが、契約書の締結が素早くできるという大きなメリットがあります。いままでの契約締結ですと、内容を確認後、どちらかの当事者が契約書を2通作成、押印後2通を郵送(持参)し、相手側が押印をして一通を返却する、というプロセスでした。郵送の場合、契約書の交換に数日かかっていましたが、電子契約の場合は即日で契約完了になります。

2)コスト削減と節税効果
書類の郵送に関するコストが削減できます。
また、収入印紙が不要になるため節税が可能です。金額の大きな契約ですと、収入印紙の金額も大きくなります。

3)保管スペースの削減や管理の簡便化
紙での保存ではないので保管スペースの削減ができます。契約が終了しても、記録のために契約書を長期に保管している会社は多くあります。電子の場合は長期保管も簡単です。

 

契約内容が変わった場合には付帯契約などや覚書で変更点を明確にした文書を残しますが、どの契約に関連する覚書なのか、紙の場合は管理が難しくなります。手間をかけずにその管理ができるという点はメリットです。

 

更に、自動更新になっている契約も多くあります。実際は取引が終了しているにも関わらず、契約だけが残ってしまうということはよくあります。これらもシステム上で簡単に管理できるのは大きなメリットといえるでしょう。

電子契約に対する課題

1)契約の一方しか電子契約システムを導入していない
電子契約は一方だけが電子契約にしても、契約の相手側が電子契約に同意しないと実行できません。導入していない相手に対しても電子契約をすることは可能ですが、相手側ではその契約をどのように管理するかが課題になります。

 

2)電子契約システムが競合する
両方が電子契約のシステムを導入していた場合でも、違う電子契約のシステムを使っていた場合には、どちらのシステムで契約するかで衝突が起きてしまうことがあります。その場合、どちらのシステムを使うかの協議をして合意する必要があります。
但し、そのシステムで契約書などの文書管理もしていた場合は、自社が使っているシステムから管理が外れてしまう可能性があります。他社の電子契約システムで契約されたものでも、管理できるシステムがある場合は問題ありませんが、そうではない場合は別管理をしなければなりません。

 

3)契約を交わす頻度が少ない企業
契約書を交わす頻度が少ない企業は電子契約のメリットがあまり大きくありません。システムを導入すると一定の金額が固定費として増加します。その場合には紙の契約書のままにするか、相手側のシステムで契約を締結するか、などの判断が必要になります。

 

4)過去分の契約書との一元管理
電子契約システムを導入しても、過去に締結した契約書は紙のまま残ります。また、相手先の事情や、契約内容によって、一部書面で締結せざるを得ない契約も発生するでしょう。紙の契約書と電子契約とを一元管理は、導入後の課題となることが多いです。

まとめ

電子契約とリーガルテックについて、最近の動向をまとめました。電子契約のみではなく、関連したサービスも併せて合理化できるシステムも増えていますので、利用者にとっては利便性が上がっているといって良いでしょう。ただ、まだまだ過渡期ということもあり、今までの紙の契約と電子契約が混在する可能性も高いと思われます。

 

三井倉庫ビジネスパートナーズでは、紙の契約書を電子化(スキャニング)し、それに伴うデータエントリを行うサービスを提供しています。電子化した契約書データをインポートする機能は各種電子契約システムで提供されています。同一システム内で管理することによって、電子契約と紙との一元管理が可能となります。ご興味がある方はぜひお問い合わせください。https://www.mbp-co.net/service/digitization

この記事は2022年10月5日時点の記事です。

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