退職時に会社が用意する失業保険受給に必要な書類について

2022/12/27

従業員が退職した場合、住民税や社会保険に関する手続きが必要ですが、なかでも重要なことが、従業員が失業保険(正式には「基本手当」)を受け取るために必要な手続きです。
失業保険は、退職した従業員が次の職場をじっくり探したり、療養に努めたりするために必要な仕組みです。
そのため従業員が退職した際は、企業の労務人事担当の方が、適切に手続きを行う必要があります。

 

今回は、従業員が退職した際に必要な失業保険に関する手続き、およびそのほかの手続きについて解説します。
ご一読頂ければ必要な手続きの概要がわかると思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

 

雇用保険資格喪失手続きの手順

退職する従業員が、雇用保険に加入している場合は「雇用保険資格喪失手続き」が必要です。
すべての従業員が雇用保険へ加入しているわけではなく、以下に当てはまる従業員のみ被保険者となります。

 

・週における所定労働時間が20時間以上
・31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者

ハローワークに「雇用保険被保険者資格喪失届」を提出する

「雇用保険被保険者資格喪失届」とは、雇用保険の被保険者ではなくなったことを証明するための書類です。
従業員が被保険者ではなくなった翌々日から起算して、10日以内にハローワークに提出する必要があります。

 

ちなみに従業員が退職していない場合でも、以下に当てはまる場合は「雇用保険被保険者資格喪失届」をハローワークへ提出する必要があります。

 

・週における所定労働時間が20時間未満に変更されたとき
・従業員が役員になったとき
・出向元に復帰したとき(在籍出向を除く)

 

また2020年4月から、社会保険に関連する手続きの一部を「電子申請」するよう義務付けされました。
「雇用保険被保険者資格喪失届」も義務化の対象となっているため、以下に当てはまる特定の法人は電子申請する必要があります。

・資本金、出資金又は銀行等保有株式取得機構に納付する拠出金の額が1億円を超える法人
・相互会社
・投資法人
・特定目的会社

「雇用保険被保険者資格喪失届」は、特定の法人ならハローワークの公式サイトから電子申請を出します。
また特定の法人以外の場合は、ハローワークの公式サイトから用紙を印刷して必要事項を記入します。

 

記入したら、電子申請の場合は画面に沿って申請すれば完了です。
紙面申請の場合は、以下の書類と一緒にハローワークへ提出します。

 

・雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)
・出勤簿
・退職辞令発令書類
・労働者名簿
・賃金台帳
・離職理由が確認できる書類

 

提出する際は、ハローワークの窓口へ直接持参するか郵送します。

退職者に「雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)」を発行する

退職者が失業保険を受給するためには、本人自らハローワークへ出向いて「離職票」を提出する必要があります。
「離職票」は企業側がハローワークへ「雇用保険被保険者離職証明書(以下「離職証明書」)」を提出することにより発行されるため、企業が「離職証明書」を提出しなければ、退職した従業員は離職票を受け取ることができず、失業保険も受給することができません。

 

なお、退職した従業員が離職票は不要であるという意思を示した場合は「離職証明書」を提出する必要はありません。
そのため退職することが判明した時点で「離職票」の要否については確認しておきましょう。
※退職日の時点で従業員が59歳以上の場合は意思に関係なく「離職証明書」の発行手続きが必要です。

 

「離職票」が必要な場合は、ハローワークで3枚一組になった「離職証明書」の用紙を入手します。
(そのうちの一枚が「離職票」になります)
用紙はハローワークへ直接取りに行くか、郵送してもらうこともできます。
インターネットからダウンロードすることはできないため、早めに準備をしましょう。

 

所定のルールに従って用紙に記入したら、早急にハローワークへ提出します。
「離職証明書」も、従業員が被保険者ではなくなった翌々日から起算して10日以内にハローワークへ提出する必要があり、「雇用保険被保険者資格喪失届」と一緒に提出するのが一般的です。

 

ハローワークへの提出が完了したら、後日「雇用保険被保険者離職票-1(離職票1)」と「雇用保険被保険者離職票-2(離職票2)」が送られてきますので、2枚とも退職した従業員へ速やかに送付して完了です。

そのほか従業員の退職時に労務人事が行うべき手続き

従業員が退職した際に行うべき手続きは、失業保険に関係することだけではなく社会保険や住民税なども含まれます。
行うべき手続き内容に関してあらかじめ把握しておきましょう。

退職証明書の発行

「退職証明書」とは、従業員が企業を退職したことを証明するための書類です。
基本的には、従業員から要望がなければ作成する必要はありません。
しかし、従業員からの要望があれば必ず発行するよう労働基準法にも定められているため、あらかじめ従業員に「退職証明書」の要否を確認しておくと慌てて作成しなくて済むかと思います。

 

“(退職時等の証明)
第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。“

 

【引用】「e-gov法令検索」(https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=322AC0000000049

 

退職証明書に決まった書式はなく、従業員から求められた場合は、最低限以下の項目について記載し、従業員へ交付します。

 

・書類名
・証明年月日
・退職した従業員名
・証明内容
(・そのほか従業員が希望する記載内容)
・事業所住所・事業主名

 

ちなみに従業員にとって退職証明書が必要になるシーンとは、例えば以下があります。

 

・国民健康保険や国民年金の手続き時
・転職時

 

ちなみに従業員にとって退職証明書が必要になる事例として、国民健康保険や国民年金の手続き時や、転職時などがあります。
国民年金に切り替えるとき、厚生年金から抜けたことを証明するために「退職証明書」が求められる場合があります。
また転職時において、転職先によっては「退職証明書」の提示を求められる場合があります。

社会保険資格喪失手続き

従業員が退職する場合、会社を通じて加入している「健康保険」や「厚生年金保険」の資格が喪失します。
退職した従業員が、転職先において社会保険の手続きができなくなる恐れがあるため、従業員が退職した日から5日以内に、健康保険組合および年金事務所にて速やかに社会保険資格喪失手続きを行う必要があります。

 

健康保険の喪失手続きの際には健康保険証を組合に返却する必要があります。
紛失や回収不能といったケースもよくありますので、その際は、「健康被保険者証回収不能・紛失届」を別途作成し、併せて提出する必要があります。

 

必要事項を記載したら、健康保険組合および年金事務所へ提出します。
提出方法は、各事務所の窓口や電子申請、郵送での提出が可能です。

住民税の手続き

住民税は、前年の1月1日から12月31日までの1年間における所得をもとに納税額が算出され、翌年の6月から1年間で納付する仕組みです。
住民税を納付する方法は「普通徴収」と「特別徴収」の2種類があり、普通徴収は従業員が所在地へ直接納付する方法です。
一方で特別徴収は、従業員の給与から住民税分を天引きし、企業が代わりに納付する方法です。
前年の所得を基準に算出された納税額を12分割して、毎月従業員の給与から天引きして納めます。

 

前年の1月1日から12月31日までの1年間における所得をもとに納税額が産出され、翌年の6月から1年間かけて納付する仕組みです。
住民税を納付する方法は「一般納税」と「特別納税」の2種類があり、一般納税は従業員が所在地へ直接納付する方法です。
一方で特別納税は、従業員の給与から住民税分を天引きし、企業が代わりに納付する方法です。
前年の所得を基準に算出された納税額を12分割して、毎月従業員の給与から天引きして納めます。

 

退職した従業員がすぐに転職先へ就職する場合は、「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」に必要事項を記載してから、転職先へ送付します。
ただし転職までに間が空く場合は、住民税の年度が切り替わる6月の前後のどちらで退職するか確認します。
退職日によって、以下の対応が必要です。

 

・退職日が1/1~4/30の場合 : 退職月から5月支払い分まで一括して納税する必要があります。
・退職日が6/1~12/31の場合 : 一括徴収する必要はありません。
・退職日が5/1~5/31の場合 : 最後の給与から住民税を天引します。

源泉徴収票の発行

源泉徴収票の発行は、退職するすべての従業員に対して行う必要があります。
また源泉徴収票を作成するには以下の金額を算出し、記載します。

 

・給与所得控除後の金額の計算
給与所得控除後の金額は、給与収入金額から給与所得控除額を引くことで算出できます。
ただし給与所得控除額は給与に応じて定められており変動することがあるため、国税庁の公式Webサイトで確認して下さい。

 

・課税所得額の計算
所得控除額は、基礎控除や配偶者控除、社会保険料控除、生命保険料控除など複数の種類の控除額から算出されます。
それぞれ、あらかじめ控除額が決められているため、該当する控除額の合計を算出し、「給与所得控除後の金額」から差し引いて「課税所得額」を算出します。

 

・所得税の計算
先ほど算出した「課税所得額」に、決められた所得税率をかけます。
所得税率は5%~47%まで幅広く、前年の所得額によって異なります。

 

・復興特別所得税の計算
「復興特別所得税」とは、東日本大震災の際に被災した地域の復興を支援するための財源として2013年から2037年まで課税される税金です。
納税者すべてが課税対象であり、課税所得額の2.1%が課税率です。

まとめ

従業員が退職した際に、労務人事担当者が行うべき手続きについてご紹介しました。
必要な手続きの種類は意外にも多く、初めて携わる人はとまどうでしょう。
しかしある程度事前の準備があれば、万が一従業員の退職者が出た際もスムーズに対応できるようになります。
また申請方法や申請ルールに関しては、随時変更になる可能性があります。
手続きを行う際は、念のため厚生労働省などの公式Webサイトを閲覧し、新しく義務化された内容や変更されたルールがないか確認しましょう。

この記事は2022年12月27日時点の記事です。

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