溶解処理とシュレッダーはどう選ぶ?機密書類の廃棄手法と、監査で慌てない証明書管理のポイント
2026/01/13

はじめに
書類保管の最終ステップである「廃棄」において、避けて通れないのが「正しく処分したことを示す記録」の管理です。
機密書類は単にゴミとして捨てるわけにはいかず、その手法や記録の残し方に頭を悩ませる担当者の方も多いのではないでしょうか。
特に「溶解処理」と「廃棄証明書」の関係、あるいはそれらをいつまで保管すべきか?という点は、コンプライアンスの観点からも非常に重要です。
こうした文書管理の適切なプロセスは、企業の透明性と信頼を支える土台となります。
今回は、廃棄方法ごとの特徴を比較しながら、実務で重要となる証明書の管理術について解説します。
Contents
書類の廃棄方法とその特徴
オフィスの書類を廃棄する際、主に検討されるのが「溶解処理」と「シュレッダー処理」です。機密性と作業効率を重視し、箱ごと外部へ委託する「溶解処理」か、あるいは数枚単位の書類をその場で即座に自社処分する「シュレッダー処理」か。
廃棄量と求めるセキュリティレベルに応じて、これらを適切に使い分けることが、健全な書類保管体制の維持につながると考えられます。
溶解処理:液体状に溶かして物理的に抹消する手法
溶解処理は、不要になった書類を大型のパルパー(溶解槽)に投入し、水と攪拌(かくはん)して液状に溶かす方法です。紙の繊維そのものを物理的に分解するため、情報の復元が困難になる点が大きな特徴です。
実務上の大きな利点として、多くの業者が「保管箱に入れたまま(未開封)」での処理に対応している点が挙げられます。
中身を一切人の目に触れさせることなく機密を抹消できるため、高度な秘匿性が確保されやすい傾向にあります。
また、ホチキスやバインダーを外すといった事前の仕分け作業が不要になるケースが多く、担当者の実務工数を大幅に削減できる点も大きな魅力です。
さらに、溶解された紙繊維はリサイクルされ、環境に配慮した廃棄手法であることも、現代の企業活動におけるメリットの一つと言えるでしょう。
シュレッダー処理:即座に処分できるが、大量廃棄には工数負担が伴う
オフィスで日常的に行われるのが、シュレッダーによる裁断です。
不要になったその場ですぐに処理できるため、数枚単位の書類処分には非常に適した方法です。
一方で、基本的には自社スタッフによる手作業となるため、年度末などの大量廃棄の際には多大な時間と人手が必要になる可能性があります。
また、クリップの取り外しといった細かい仕分け作業も自社で行わなければならず、実質的な作業負担が重くなりがちです。
裁断片からの復元リスクなども考慮すると、全社的な文書管理の出口戦略としては、溶解処理などの外部サービスとうまく組み合わせるアプローチが有効かもしれません。
セキュリティレベルと廃棄証明書の重要性
どの方法を選ぶにせよ、企業の実務として欠かせないのが「いつ、何を、正しく捨てたか」という客観的な記録を残すことです。
廃棄証明書:預けた書類が確実に処理された「実務上の証拠」
外部業者に廃棄を委託した場合、処理完了後に発行されるのが「廃棄証明書(溶解証明書など)」です。これは、預けた書類が確実に処理されたことを証明する、実務上極めて重要な証拠となります。
実務上よく使われる用語として、以下の違いを理解しておくことが推奨されます。
・廃棄証明書(総称): 書類の処分を依頼した会社に対し、処理会社が「確かに廃棄を完了しました」と報告する書類の総称です。
・溶解証明書(手法の証明): 廃棄証明書の一種で、特に溶解処理を行った際に発行されます。
「未開封の保管箱の状態で物理的に抹消した」という高度な秘匿性を具体的に証明するものです。
なお、これらは産業廃棄物の管理に用いられる「マニフェスト(産業廃棄物管理票)」とは性質が異なるものです。機密書類の溶解処理においては、マニフェストとは別に、こうした処理工程を証明する専用の証明書が発行されるのが一般的です。
これらは税務調査や外部監査において書類の所在を問われた際、「この日に適正に廃棄しました」と客観的に示すための有力な根拠となります。
廃棄記録の保管義務と「起算日」の考え方
廃棄証明書自体も、一定期間の保管が望ましいとされる重要文書です。ここで重要になるのが、保管期間をいつから数え始めるかという「起算日」の考え方です。
会計・税務関連の書類を管理する場合、実務をシンプルにするために「事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」を一律の起算日とするアプローチが一般的に検討されます。
廃棄証明書は、一般的に「廃棄した書類自体の法定保存期間」に準じて保管することが推奨されます。
例えば、法人税法上の帳簿書類であれば、起算日から7年間の保管が義務付けられています。
廃棄証明書は「その書類を正しく処分したこと」を証明する補完書類となるため、対象の書類の保存期間が満了するまでは、セットで管理しておくのが実務上安全と言えるでしょう。
【重要:保存期間に関するご注意】
上記の「7年」は一般的な事例です。欠損金の繰越控除を適用する場合(2018年4月1日以後に開始する事業年度など)は、個別事情により最長10年間の保存が必要となるケースがあります 。
詳細については、必ず自社の顧問税理士等の専門家にご確認いただくことをお勧めします 。
効率的で安全な廃棄を実現するためのアプローチ
安全な廃棄を仕組み化し、現場の迷いやミスを減らすためには、ルール作りと適切なツールの活用が有効です。
廃棄サイクルをルール化する
法律上の保存期間が満了した書類を、その都度個別に廃棄するのは非効率です。
実務では「決算後の〇月」など、一年に一度の「廃棄実行月」をあらかじめルール化しておくアプローチが考えられます。
このようにタイミングを固定することで、計画的な業務遂行が可能になり、書類が溜まりすぎるのを防ぐことができます。
信頼できる外部委託先を選定する
自社で膨大な文書の起算日をすべて管理し、正確な廃棄時期を把握し続けるのは、相応の労力を伴います。
例えば「スマート書庫」のような外部の書類保管サービスを活用すると、設定した保存期限が近づくとシステムから通知が届く仕組みを利用できます。
担当者は届いた通知を確認し、画面上で「廃棄指示」を出すだけで、そのままセキュリティの高い溶解処理へ移行することが可能です。これにより、期限管理の負担を抑えつつ、確実な承認プロセスに基づいた文書管理の効率化が期待できるでしょう。
まとめ
適切な書類廃棄は、単なる「整理整頓」を超え、企業の信頼を守り、確かなガバナンスを築くための価値あるプロセスです。溶解処理によって保管箱を未開封のまま確実に抹消し、その完了を示す「実務上の証拠」を管理する。
このシンプルなアプローチを習慣化することで、法令遵守の安心感はもちろん、不要な書類に縛られない、生産性の高いオフィス環境を実現できるはずです。
