書類の保管期間
書類作成の最初の段階で書類保管期限を決める
ドキュメントマネージメントフローの最後の工程「廃棄」は書類作成時に決めておくことが理想です。
廃棄のことを予め考えておかないと、本来必要がなくなったにも関わらず書類は溜まる一方になってしまいます。そのため書類作成時に「この書類はいつまで保管しておくものなのか?」を判断しておくことが大切なのです。
書類の廃棄時期別に書類を管理していくことは効率的な書類管理の第一歩です。
廃棄時期に関しては、まずは法律で保存期間が決まっている「法定保存文書」を理解しましょう。
文書の保存を義務づける法律には、会社法や各種の税法、労働基準法、健康保険法、厚生年金保険法など業種を問わずに普遍的に適用される法律のほかに、それぞれの業種に関する法律もあります。
税法関係や労働基準法関係などは、所定の期間、文書が保存されていないと罰則が適用される場合もあり不利益を被ることがありますのでしっかり把握しておく必要があります。
法律で保存が義務づけられている書類
文書の保存を義務づけている法律には次のようなものがあります。法律によって、保存期間の起算日が異なることにも注意しましょう。
なお、法定の保存期間はあくまで最低限度を定めた期間。そのため会社にとっての必要性や安全性などを考慮して、適宜期間を延長する必要がないかどうか社内ルールを決める必要があることも覚えておきましょう。
保存期間が比較的短い書類(短期保存)1〜3年
保存年限 | 分類 | 該当する文書 | 起算日 | 根拠 |
---|---|---|---|---|
1年 | 人事・労務関係 | 臨時報告書、自己株券買付状況報告書およびそれらの訂正報告書の写し | 提出日 | 金融商品取引法25条 |
2年 | 人事・労務関係 | 健康保険・厚生年金保険に関する書類 | 完結の日(退職、解雇や死亡の日) | 健康保険法施行規則34、厚生年金保険法施行規則28 |
2年 | 人事・労務関係 | 雇用保険に関する書類(被保険者関係以外の一切) | 完結の日(退職、解雇や死亡の日) | 雇用保険法施行規則143 |
3年 | 総務・庶務関係 | 四半期報告書、半期報告書およびその訂正報告書の写し | 提出日 | 金融商品引取法25 |
3年 | 人事・労務関係 | 労働者名簿 | 死亡・退職・解雇の日 | 労働基準法109、労働基準法施行規則56 |
3年 | 人事・労務関係 | 賃金台帳 | 最後の記入をした日 | |
3年 | 人事・労務関係 | 雇入れ・解雇・退職に関する書類 | 退職・死亡の日 | |
3年 | 人事・労務関係 | 賃金その他労働関係の重要書類 (労働時間を記録するタイムカード、残業命令書、残業報告書など) |
完結の日 | |
3年 | 人事・労務関係 | 労災保険に関する書類 | 完結の日 | 労働者災害補償保険法施行規則51 |
3年 | 人事・労務関係 | 労働保険の徴収・納付等の関係書類 | 労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則70 | |
3年 | 人事・労務関係 | 派遣元管理台帳 | 契約完了の日 | 労働者派遣事業法37 |
3年 | 人事・労務関係 | 派遣先管理台帳 | 労働者派遣事業法37 | |
3年 | 人事・労務関係 | 身体障害者等であることを明らかにすることができる書類 (診断書など) |
最後の記入をした日 | 障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則45 |
3年 | 人事・労務関係 | 安全、衛生委員会議事録 | 作成日 | 労働安全衛生規則23 |
4年 | 人事・労務関係 | 雇用保険の被保険者に関する書類 | 完結の日 | 雇用保険法施行規則143 |
保存期間が長い書類(中期保存)5年
保存年限 | 分類 | 該当する文書 | 起算日 | 根拠 |
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5年 | 経理・税務関係 | 非課税貯蓄申込書、同申告書、同限度額変更申込書、同勤務先移動申告書、同廃止申告書などの写し | 申告書、退職等に関する通知書等の提出があった日の属する年の翌年 | 所得税法施行令48、所得税法施行規則13、租税特別措置法2-21、租税特別措置法施行規則3-6 |
5年 | 経理・税務関係 | 退職等に関する通知書 | ||
5年 | 経理・税務関係 | 監査報告 | 株主総会の1週間前の日 ※取締役会設置会社は2週間前の日 | 会社法442 |
5年 | 経理・税務関係 | 会計監査報告 | ||
5年 | 経理・税務関係 | 会計参与が備え置くべき計算書類、附属明細書、会計参与報告 | 会社法378 | |
5年 | 総務・庶務関係 | 事業報告 | 会社法442 | |
5年 | 総務・庶務関係 | 有価証券届出書・有価証券報告書およびその添付書類、訂正届出(報告)書の写し | 提出日 | 金融商品取引法25 |
5年 | 総務・庶務関係 | 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写し | 写しの受領日 | 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則8の26 |
5年 | 総務・庶務関係 | 産業廃棄物処理の委託契約書 | 契約終了日 | 廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則8の4の3 |
5年 | 人事・労務関係 | 従業員の身元保証書 | 作成日 | 身元保証ニ関スル法律1、2 |
5年 | 人事・労務関係 | 誓約書等の書類 |
保存期間がとても長い書類(長期保管)6〜10年
保存年限 | 分類 | 該当する文書 | 起算日 | 根拠 |
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7年 | 人事・労務関係 | 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書、給与所得者の配偶者特別控除申告書 | 申告書等の提出期限の属する年の翌年1月10日の翌日 | 所得税法施行規則 76の3、77、77の4、租税特別措置法施行規則 18の23、18の23の3 |
7年 | 人事・労務関係 | 給与所得者の保険料控除申告書 | ||
7年 | 人事・労務関係 | 給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書 | ||
7年 | 経理・税務関係 | 取引に関する帳簿 (仕訳帳、現金出納帳、固定資産台帳、売掛帳、買掛帳など) |
帳簿閉鎖日および書類作成日・受領日の属する事業年度終了の日の翌日から2か月を経過した日 | 法人税法施行規則59、67 |
7年 | 経理・税務関係 | 決算に関して作成された書類(上に挙げた、会社法で10年保存が義務づけられている書類以外) | ||
7年 | 経理・税務関係 | 現金の収受、払出し、預貯金の預入れ・引出しに際して作成された取引証憑書類(領収書、預金通帳、借用証など) | ||
7年 | 経理・税務関係 | 有価証券の取引に際して作成された証憑書類 | ||
7年 | 経理・税務関係 | 取引証憑書類 (請求書、注文請書、契約書、見積書、仕入伝票など) |
法人税法59 | |
7年 | 経理・税務関係 | 電子取引の取引情報に係る電磁的記録 | 電子帳簿保存法施行規則8条 | |
7年 | 経理・税務関係 | 源泉徴収簿(賃金台帳) | 法定申告期限 | 国税法70~73、労働基準法108、労働基準法施行規則54 |
7年 | 経理・税務関係 | 課税仕入等の税額の控除に係る帳簿、請求書等(5年経過後は、帳簿または請求書等のいずれかを保存) | 課税期間末の翌日から2ヶ月を経過した日 | 消費税法30、消費税法施行令50 |
10年 | 総務・庶務関係 | 株主総会議事録 | 株主総会の日 | 会社法318 |
10年 | 総務・庶務関係 | 取締役会議事録 | 取締役会の日 | 会社法371 |
10年 | 総務・庶務関係 | 監査役会議事録 | 監査役会の日 | 会社法394 |
10年 | 経理・税務関係 | 監査等委員会議事録 | 監査等委員会の日 | 会社法399-11 |
10年 | 経理・税務関係 | 計算書類および付属明細書 | 作成日 | 会社法435 |
10年 | 総務・庶務関係 | 契約期間切れ契約書 | 満期、解約の日 | 会社法432 |
10年 | 経理・税務関係 | 会計帳簿および事業に関する重要書類(総勘定元帳、各種補助簿など) | 帳簿閉鎖の日 |
破棄することができない書類(永久保管)
保存年限 | 分類 | 該当する文書 | 起算日 | 根拠 |
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永久 | 総務・庶務関係 | 定款 | – | 法律等による保存年限はないが、文書の性質上非常に重要なため、永久保存が必要と考えられる |
永久 | 総務・庶務関係 | 株主名簿等 | ||
永久 | 総務・庶務関係 | 登記・訴訟関係書類等 | ||
永久 | 総務・庶務関係 | 知的所有権に関する関係書類(特許証や登録証、特許料や登録料の受領書など) | ||
永久 | 総務・庶務関係 | 社規・社則およびこれに類する通達文書 | ||
永久 | 総務・庶務関係 | 効力の永続する契約に関する文書 | ||
永久 | 総務・庶務関係 | 重要な権利や財産の得喪等に関する文書 | ||
永久 | 総務・庶務関係 | 社報・社内報、重要刊行物 | ||
永久 | 総務・庶務関係 | 製品の開発・設計に関する重要な文書 |
法律で保存期間を定められていない書類(法定保存文書以外)
法律で規定されていない書類は、自社で保存期間を定めることになります。
全社一律に決められるものもありますが、部門ごとに決めるほうが現実的で守りやすいルールとなります。ただしその際には、同じ文書が部門によって期限がバラバラになることが無いように、最後には、全社で統一していきましょう。
文書を作成するタイミングで書類の廃棄の時期を決定することができない場合も多くあります。そこで具体的な期間が決められない場合は「短期保管」か「中長期保管」のどちらかだけでも判断してファイリングをしていきましょう。
保存期間を決める時の様々な基準
法定保存文書以外の書類についての保存期間を決める場合の基準には以下のようなことを含めて考えていくとよいでしょう。
一方、保管期限が単純なルールで決められないものとして契約書類があります。契約書はその有効期限が明確なものと自動更新で不定期に続いていくものがあります。このような契約書類は他の書類とは区別して管理方法を決めておくとよいでしょう。
- ・会社の業務遂行上の必要性(経営上の視点)
- ・トラブルや訴訟に巻き込まれた場合の立証上の必要性(訴訟を前提としたリスクマネジメントの視点)
- ・会社の歴史上の重要性(社史の編纂時などにおける必要性の視点)
保管期間に関するQ&A
書類の保管期間の起算日は作成日で良いの?
電子データで保管している場合も紙の保管は必要なの?
請求書の保管期間はいつまで?
書類の保管期限ってどの法律で決まっているの?
保管期間を守らなかった場合、ペナルティってあるの?
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