書類保管のはじめの一歩!「起算日」を明確にする3つの考え方とシンプル管理術
2025/12/10

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はじめに
文書の保存期間を正確に定める上で、避けて通れないのが「起算日」の特定です。
起算日とは、文字通り保存期間のカウントをスタートさせる日のこと。
例えば、保存期間7年と法律で決まっていても、その7年をいつの日付から数え始めるのか?という判断は、適用される法律や文書の種類によって異なるため、難しいポイントとなります。
このコラムでは、皆さまが抱える『起算日って、結局いつなの?』という疑問と、起算日の判断基準、実務上の注意点についてご紹介します。
なぜ「起算日」の特定が重要なのか?
保存期間は単なる目安ではありません。会社法、電子帳簿保存法、さまざまな業法や法令によって、文書ごとに保存年限が定められています。この保存年限を正確に守るためには、いつからカウントを始めるかという起算日を明確にしなければなりません。
もし起算日の特定を誤ってしまうと、意図しない形で法令に定められた保存期間満了前に文書を廃棄してしまうリスクが生じます。
したがって、起算日を正しく特定することは、企業が法令を遵守し、法的責任を果たす上で、重要な作業となります。
実務で役立つ「起算日」特定のための判断ステップ
複雑に思える起算日の特定ですが、大切なのは、すべての書類を個別に判断しようとしないことです。
法令上の根拠をまず特定する
文書の保存期間は、必ず何らかの法令に根拠があります。
まずはその書類がどの法令によって保存義務を負っているのかを明確にします。
・会計・税務関連書類であれば、法人税法・会社法など。
・人事関連書類であれば、労働基準法、雇用保険法など。
・特定の許認可・事業に関する書類であれば、それぞれの業法(建設業法、宅建業法など)。
法令が特定できたら、その法令に記載されている保存期間と起算日の定めを確認します。
この根拠の特定こそが、正しい起算日を導き出すための確実な方法です。
大多数の書類は「事業年度の翌日」で管理する
実務上、企業内の文書の多くは、税法や会社法が適用される会計関連書類で占められています。
これらの書類は、事業年度の確定申告書の提出期限の翌日を起算日とします。
すべての書類を一つひとつ異なる起算日で管理するのは、管理工数が膨大で非効率的です。
そのため、会計・税務関連の書類をまとめて、一律で「事業年度の確定申告書の提出期限の翌日」を起算日として管理する一括管理アプローチを検討してみましょう。
このアプローチにより、文書管理の仕組みをシンプルに保つことができます。
例外的な長期文書は「終了日」を明確にタグ付けする
長期にわたる効力を持つ文書(例:長期契約書、不動産関連の権利書、借入金契約書など)は、個別の管理が必要です。
これらは行為完了基準に基づき、契約が終了した日や債務が弁済された日が起算日となります。
実務では、これらの長期文書を保管する際に、文書台帳やファイル名などに「効力終了日:20XX年X月X日」という情報を必ず付記(タグ付け)するのがよいでしょう。
この終了日が、将来の廃棄判断の起点となるためです。
この情報さえ明確にしておけば、契約期間が終了した翌事業年度から、他の一般文書と同じように保存期間のカウントを始めることができます。
起算日と保存期間を明確にするための実践的ポイント
起算日の特定で悩む時間を減らし、文書管理をスムーズにするための、具体的な実践ポイントを3つご紹介します。
文書管理規程で「ルール」を統一する
文書管理規程は、社内の文書管理の基本となるルールブックです。
この規程内で、文書の種類(例:請求書、契約書、稟議書)ごとに、適用される法令、保存期間、そして最も重要な起算日の考え方を明記しましょう。
例えば、「すべての税務・会計関連書類は、事業年度終了の日の属する年度の確定申告書の提出期限の翌日を起算日とする」と定めることで、現場での迷いを大幅に減らすことができます。
廃棄サイクルを「事業年度」に合わせる
文書の保存期間が7年間であれば、起算日から7年を経過した年度末や、次の事業年度の開始時など、会社の事業年度の区切りに合わせて廃棄のタイミングを設けることが効率的です。
例えば、「毎年6月1日」を「前々事業年度終了分までの廃棄実行日」と定めることで、年間を通して廃棄業務が計画的に行えるようになります。
外部サービスの活用も視野に入れる
自社で膨大な量の文書の起算日を管理し、廃棄時期を正確に把握するのは、非常に手間がかかる作業です。
外部の書類保管サービスを利用し、起算日や保存期間を設定することで、システムが自動的に廃棄予定日を管理してくれます。
これにより、文書の個々の起算日を追う必要がなくります。
おわりに
「起算日」の特定は、複雑な法的な作業のようにも感じられますが、基本はその書類が、いつ法的な役割を終えたかを判断することにあります。
税法や会社法が適用される会計関連書類は事業年度基準で管理し、効力が長期にわたる例外的な文書だけを個別に終了日でタグ付けし管理する。
このシンプルなアプローチを取ることで、法令を遵守しつつ、過剰な文書に悩まされない、効率的な文書管理が実現できるでしょう。
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