会社法で事実上の「永久保存」が望ましい紙文書(定款、株主名簿など)の管理方法
2025/12/17

はじめに
会社経営において、文書管理は企業の歴史を保持する上でも重要です。
特に定款や株主名簿といった重要文書は、会社法やその他の法令で厳密な「永久保存」が義務付けられているわけではありませんが、その文書の性質上、事実上の永久保存が強く推奨されています。
これらの文書は、会社の存在証明、権利関係の明確化、将来的な訴訟や監査への対応に必要となります。
本記事では、これらの「永久保存」が望ましい紙文書の適切な管理方法をご紹介いたします。
永久保存が望ましいとされる主な文書
会社法には「永久保存」という明確な規定はありませんが、実務上、会社が成立した時点から解散・清算まで常に存在し、参照できる状態でなければならない文書を「永久保存文書」として扱われることを推奨します。
・定款 会社の組織や活動の根本規則を定めたもの。
・株主名簿 株主の氏名や住所、保有株式数などを記録したもの。株主の権利行使や会社運営の基礎となります。
・新株予約権原簿・社債原簿 登記・訴訟に関する書類 権利証、判決書など。
・官公署への提出文書や重要な許認可証
・効力が永続する契約に関する文書
・重要な権利や財産の得喪に関する文書
補足: 会社法では、株主総会議事録や取締役会議事録、計算書類(貸借対照表、損益計算書など)については、原則として10年間の保存が義務付けられています(会社法318条、442条など)。
これらの文書も重要性が高いため、法定保存期間を超えて永久保存している企業もあります。
紙文書の具体的な管理方法
定款や株主名簿など、事実上の永久保存が望ましいとされる重要文書 は、会社の存続期間を通じていつでも参照できる状態を維持し、物理的な劣化や紛失を防ぐための対策が必要です 。
会社法に「永久保存」の明確な規定はないため 、これらの重要文書の取扱いは、個々の会社が定める「文書管理規程」の中で、永久保存文書として位置づけ、その管理方法を定めることになります。
セキュリティの確保
・社内規程に基づき、これらの最重要文書は鍵のかかる場所(金庫、施錠できるキャビネット)での保管を徹底し、必要な人物のみがアクセスできるよう厳しく制限します 。
持出・返却の記録を残すための管理台帳を設けることも必要です。
環境管理と劣化防止
・直射日光、高温多湿を避け、火災に備えた耐火性能を備えたキャビネットでの保管を推奨します 。
紙は経年劣化するため、特に永久保存文書には不可欠な対策です 。
電子データでのバックアップ
・物理的なリスクを補完し、将来的な参照の容易性を高めるため、紙の原本をスキャンし、電子データとして保存する(電子化)ことも有効です 。
・電子データについても、データの真正性や改ざん耐性(タイムスタンプ、ハッシュ値)を確保し、適切なアクセス管理のもと、定期的なバックアップを実施することが、永久にデータを維持するために重要となります。
外部保管サービスの利用
・自社内での管理が困難な場合は、高セキュリティの環境と専門的な管理体制を持つ外部の書類保管サービスを利用することも検討するべきでしょう。
特に、セキュリティやDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応したサービスを選ぶことで、単なる保管以上の業務効率化(BPO)やリスク低減のメリットを享受できます。
最後に
定款や株主名簿などの重要文書は、会社法上の明確な「永久保存」義務はないものの、企業の存続と信用に関わる極めて重要な資産です 。
これらの文書の適切な管理は、会社の歴史を未来へ伝える上でも重要なことです 。
そのため、個々の会社は「文書管理規程」を定め、これらの重要文書を事実上の永久保存文書として位置づけていることが多いです。
規程に基づき、施錠管理や耐火キャビネットでの環境管理を徹底し 、さらには電子データでのバックアップを行うことで 、いつでも参照できる状態を維持し、物理的なリスクからも守ることになります。
まずは、社内の重要文書を洗い出し、永久保存とすべき文書を選別してみましょう。
そのうえで、永久保存を前提として文書管理規程を見直してみましょう。
