電子処方箋について解説!

2022/08/26

電子処方箋は当初、2022年の夏から導入される予定でしたが、諸般の事情により、2023年1月から正式に導入されることになりました。
この制度より、病院などの医療関係者、薬を販売する調剤薬局、薬を使用する患者がそれぞれ、どのような薬を服用しているのかを共有することができ、正しい薬剤の処方、販売、服用が一括管理できるようになります。
また、SDGsの観点からみても、紙の使用量や保管を減少させることが期待できます。
過去の記事(2021年6月23日「処方箋の保管について」)でも簡単に紹介していますが、ここでは電子処方箋について、もう少し深く概要やポイントとなる点、メリットをご紹介していきます。

電子処方箋とは?

電子処方箋とは、今までの紙の処方箋の取り扱いではなく、通信ネットワークを使ってペーパーレスで実施する仕組みです。2022年7月に厚生労働省のホームページにアップされた電子処方箋に関する情報によると、厚生労働省では電子処方箋について、下記のように説明しています。
● 電子的に処方箋の運用を行う仕組み
● 複数の医療機関や薬局で直近に処方・調剤された情報を参照可能
● 重複投薬チェックが可能

 

そして、構成のイメージは下記のようになります。(図1)

構成イメージ

(厚生労働省ホームページより)

 

これらを簡単にいうと、患者の薬に関する情報をクラウド上で管理することで、医療関係者、薬局、患者本人が一元で情報を見るようにできる仕組みです。一元化はマイナンバーカードもしくは健康保険証をベースに管理されます。マイナンバーカードの更なる普及のために、健康保険証よりもマイナンバーカードによる登録を推奨しているようです。

電子処方箋のポイント

厚生労働省では医療機関向けの資料と薬局向けの資料を出していますが、共通のポイントが2点あります。
① 複数の医療機関・薬局をまたいで、「過去3年分の、処方調剤情報含む薬剤の情報を閲覧できるようになる」こと。
② 調剤結果などの情報を電子処方箋管理サービスで簡単に確認できること
これらにより高い医療の提供を目指すことができますし、後発医薬品(ジェネリック医薬品)をより推進することができるようになります。
一方、患者にとっても、服用している医薬品の名前をすべて覚えていなくても、医療機関や薬局側で確認ができるので、重複した医薬品を処方されたり、併用してはいけない薬を処方されるようなトラブルを避けることができます。

 

電子処方箋管理サービスは「オンライン資格確認」の基盤を利用しています。オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップ、もしくは健康保険証の記号番号などにより、オンライン上で医療保険の資格情報の確認ができるようにするシステムで、2021年10月より本格運用されています。
(参考資料)
病院・診療所向け:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000961325.pdf
薬局向け:https://www.mhlw.go.jp/content/11120000/000961326.pdf

国のデータヘルスの集中改革プランの一つが電子処方箋

電子処方箋は2020年11月に厚生労働省が発表した「データヘルス改革について」で記載されている「データヘルスの集中改革プラン」の一環です。この基本的な考え方は、3つのACTIONについて「オンライン資格確認等のシステムやマイナンバー制度等の既存インフラを最大限活用しつつ、必要な法制上の対応等を行った上で、効率的かつ迅速にデータヘルス改革を進め、新たな日常にも対応するデジタル化を通じた強靱な社会保障を構築する」というものです。
(参考資料)
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/data_rikatsuyou/dai1/siryou3.pdf

 

3つのアクションについて簡単に紹介します。

ACTION 1:全国で医療情報を確認できる仕組みの拡大

患者さんや全国の医療機関等で医療情報を確認できる仕組みについて、対象となる診療情報(薬剤情報に加えて、手術・移植や透析等の情報)を拡大させます。

ACTION 2:電子処方箋の仕組みの構築

重複投薬の回避にもつながる電子処方箋の仕組みについて、オンライン資格確認等システムを基盤とする運用に関する要件整理や法制上の対応とともに、医療機関等のシステム改修を行い運用開始します。

ACTION 3:自身の保健医療情報を活用できる仕組みの拡大

一般には、PHR(Personally Health Record)と呼ばれているもので、PCやスマートフォン等を通じて国民・患者さんが自身の保健医療情報を閲覧・活用できる仕組みについて、健診・検診データの標準化に取り組み、対象となる健診等を順次拡大をします。

 

データヘルス改革は、電子処方箋の導入だけでなく、自身の保健医療情報を閲覧できる仕組みの整備にも力を入れています。例えば、今後2022年中には自治体検診・学校検診の診断結果が、2024年中には事業主検診の結果が、それぞれマイナポータル上で確認できるようになる見通しです。

オンライン資格確認とシステム導入

オンライン資格確認は、マイナンバーカードのICチップまたは健康保険証の記号番号等により、オンラインで資格情報の確認ができることをいいます。電子処方箋を導入するためには、この「オンライン資格確認」ができるようになっていなければなりません。また、同時に専用のシステムを導入していることが条件になります。導入のコストはかかりますが、一方、将来的なコストの削減も期待できます。
オンライン資格確認の制度については、補助金を含めて厚生労働省から詳細が発表されています。下記をご確認ください。

 

オンライン資格確認の導入について(医療機関・薬局、システムベンダ向け)

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08280.html

電子処方箋の利用の流れ

図1で全体の構成の概要を示していますが、それぞれの流れを説明します。

処方箋の発行(病院・診療所)

病院が医師の診断をもとに必要な薬を電子処方箋のシステム(電子処方箋管理サービス)を通じて登録を行います。この時に処方箋の登録番号が患者に通知されます。この時に医師は過去の処方箋や病気の情報をシステムから入手できるので、適切な処方を行うことができます。

処方箋受付・服薬指導(薬局)

マイナンバーカードあるいは健康保険証及び病院から通知された登録番号により、電子処方箋管理サービスから情報を入手して適切な調剤を行います。同時に薬局では薬の重複が無いかどうか、過去の処方から使用しない方がよい薬などを確認します。もし、疑義がある場合は電子処方箋管理サービスを通じて病院との連携を行います。

調剤記録・保管(病院・診療所・薬局)

処方箋は電子処方箋管理サービスにより電子的に保存されていますので、紙での保管は必要なくなります。調剤済み電子処方箋は原本保管(電子署名)の扱いとなります。

どんなメリットがそれぞれの立場の人にあるのか?

電子処方箋は医療関係者、薬局、患者のそれぞれにメリットがあります。どんなメリットがあるのか説明します。

患者から見たメリット

・医療機関や薬局が変わっても自分の薬の履歴が確認できます。
・事故や災害などの緊急時でも医療機関が容易に、けが人や被災者が常用している医薬品を把握することができます。
・電子処方箋を薬局に事前送付することで、薬局内での待ち時間が少なくなります。

医療関係者から見たメリット

・患者さんの直近の処方・調剤情報を確認することができるので、質の高い診察・処方ができます。
・電子処方箋管理サービスで過去の投薬等のチェックを実施することで、より実効性のある重複投薬防止が可能になります。
・薬局からの疑義照会件数の削減が期待できます。
・紙の処方箋の発行などに関わる事務量が軽減できます。

薬局から見たメリット

・患者さんの直近の処方・調剤情報を確認することができるので、質の高い調剤業務が期待できます。
・調剤結果や処方医への伝達事項を電子処方箋管理サービス経由で簡単に伝達できるようになります。
・電子処方箋管理サービスから処方箋をデータとして受け取ることができるので、 事務の効率化が期待できます。
・紙の調剤済み処方箋のファイリング作業、保管スペースを削減が可能となります。

まとめ

2023年1月から正式に導入される電子処方箋について、処方箋の保管の観点から電子処方箋を取り上げてみました。電子処方箋のシステム導入の詳細などはシステムのベンダーさんにお問い合わせくださるようお願いします。

この記事は2022年8月26日時点の記事です。

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