「カラーマネージメント」って聞いたことがありますか?
2022/09/15
スキャニングや画像を使うときに、色について気にしたことがありますか?何か色に対して何か違和感があっても、そのままにしている場合も多いと思います。
世の中にはさまざまなデータがありますが、色は人間の色彩の感覚によって変わってしまいます。例えば好きな色があった場合には、そちらの色の傾向に寄って行ってしまいます。この結果、色が正確に再現できていないケースも発生します。
例えば会社のロゴマークにある色がオリジナルと違っていると問題になることもあります。
色の基準を知っておくことで、どんな時に色の誤差が発生しやすいのかが理解できます。そこで色に関して重要なカラーマネージメントについて説明します。尚、すましょの鍵の「文書の電子化! 知っておきたい光と色の基礎知識」(2022年6月21日)も参考にしてください。
Contents
色空間とは
カラーマネージメントを理解するには色空間(カラースペース)ということを理解しておく必要があります。色空間とは色を座標で表現することにより、色の基準を明確にするものです。
CIExy色度図
よく使われる色空間の図にCIExy色度図があります。これはCIE(国際照明委員会)が定める表色系で、さまざまな機器がどのような範囲で色再現をできるのかを説明するときに使われます。下の図がCIExy色度図になります。
人間の目が認識できる色の範囲は図の実線の部分の中になります。紫外線や赤外線、X線などは色のついている部分の外側の波長になります。
「知っておきたい光と色の基礎知識」の記事で紹介したRGBやCMYといった加法混合や減法混合も、この色空間の一つとすることができます。
RGB、CMYの色空間の位置づけ
RGBによる色再現の基準の主なものにはsRGBとAdobe RGBがあります。sRGBは国際電気標準会議 (IEC) が定めた国際標準規格で多くのモニター、プリンター、デジタルカメラなどでこの基準が使われています。AdobeRGBはアドビ社によって提唱された色空間の定義で、DTPや色校正などの分野で標準的に使われています。CMYは印刷の色再現で使用される基準です。
どの基準を使ってもCIExy色度図の全域はカバーできていません。それを示したのが下の図です。
印刷で使われるCMYは黒のインクを加えてCMYKで再現されます。CMYの色空間の再現は狭いことがわかります。一方、Adobe RGBは最も広い再現域をもっています。しかし、広いだけ情報量が大幅に増えるので高度な機器や色校正で使われています。
カラーマネージメントとは
カラーマネージメントは正式にはカラーマネージメントシステム(Color Management System、略称:CMS)のことで、デジタルカメラ、スキャナー、モニター、プリンターなどの異なるデバイス間の色を統一的に管理するためのシステムです。様々な機器の色再現が異なっていると何が正しい色なのかわからなくなるため統一する基準が必要なのです。
この基準は、一般的にICC(International Color Consortium)の規定に準拠しています。そして、ICCプロファイルというシステムを通して、さまざまな機器から出てくる色に関するデータを統一したデータに変換します。
カラーマネージメントはどんなところで使われている?
どんな場合にカラーマネージメントが必要になるのでしょうか。例えば、パソコンで色の入った資料を作成したとしましょう。作ったパソコンでその資料を見る時には作ったときの色を再現できます。しかし、作った資料を印刷する時には、色のデータをプリンターに送らなければなりません。パソコンで作られた色はモニター(ディスプレー)を通してみていますが、プリンターで印刷する時にはインクなどで色を再現します。この時に説明したCIExyの中の座標で基準を明確にするのです。
それぞれの機器がCIExyの色空間を基準にしたICCプロファイルを持っているので、デジタルカメラで撮影された画像データの色をプリンターに送るとプリンター側のICCプロファイルがプリンターの印刷用の色情報に変換します。これによって違うデバイスの間でも同じ色を再現できるようになります。
色の基準とは
職場ではいろいろな資料があります。特に色が重要な資料、例えばロゴマークの色などはロゴの形も重要ですが、色もとても重要なデータの一つです。そしてその色をどのような方法で見るか、ということも考えなければなりません。例えば、ロゴマークを印刷会社に出す場合、色の番号やカラーガイドの一部を印刷会社に渡します。印刷市場で使われているカラーガイドはパントンのカラーガイドとDICのカラーガイドが中心です。これを基準として色を伝えます。
これらのガイドを使って色見本とすることで色の間違いが発生しないようにします。
また、古い資料などの場合、何が正しい色なのかのデータを明確にしておく必要があります。下の写真は国会図書館ウェブサイトのデジタルコレクションからダウンロードしたものですが、画像の中にカラーチャート(左側)とメジャー(右側)が一緒に写しこまれています。学術的な資料などは、このように基準になるものを一緒に写しこむことで被写体のデータを補完しています。
このように色をきちんと再現するためには基準になるものが必要になります。アナログの世界では人間の目で判断することが可能ですが、デジタルの世界では人間の目でデータを確認できません。何かのデバイスを通して確認することになります。この時に基準になるものがカラーマネージメントだということができます。
資料を保存する時の色の情報について
デジタル情報を長期に保存することは多くあると思います。この時に色を重視しなければならない資料の場合、カラースペースについて確認をしておくようにしましょう。一般のデジタルカメラで撮影されたjpeg画像の場合はほとんどがsRGB
で作成されていると思いますが、高精度のカメラを使った場合はAdobeRGBで記録されているときもあります。
保存している情報は何らかの形でリスト化していると思いますが、デジタルカメラで撮影されたjpegファイルなどには備考として色情報を追加しておくと良いでしょう。
色に関する基礎情報の入手の仕方は簡単です。Jpegのファイルにカーソルを持っていき、右クリックしてメニューの中からプロパティーを選びます。プロパティーの中から詳細を選ぶと下の図のような画面が出ます。少し下にスクロールをすると色の表現という項目がありますので、sRGBという表示があります。これが撮影された時のカラースペースとなります。一方、デジタルカメラで撮影されたものは情報がありますが、コピーをしてきた画像などはその情報がありません。このような時の色については注意が必要です。
まとめ
今回はカラーマネージメントについて説明してきました。アナログは現物を見れば何が正しい色なのかわかりますが、デジタルの場合は現物がありません。すべてモニターやデータを印刷したものを見ることになります。この時にデバイスや印刷方法によって色再現が異なってしまうことがあります。
デジタルデータを保存する時に保存容量、保存期間などは注意しますが、色についてはほとんど意識されていないのが現実です。通常の文書の場合は色について気を使う必要はありませんが、写真などのデータが含まれているときは色についても気にするようにしましょう。