【事業者必見】社会保険の手続き方法と必要書類について
2023/02/21
従業員が安心して生活が送れるよう、企業には「社会保険※」と「労働保険」の加入が義務付けられています。
社会保険は法人や従業員を5人以上雇用している事業主、労働保険は従業員を1人でも雇用している事業主は原則、加入が義務づけられています。
加入手続きには期限が設けられていますので、準備にあわてないようあらかじめ手続き方法について把握しておきましょう。
当記事では、社会保険・労働保険の概要と手続き方法、従業員が退職したときの手続きについて解説します。
※社会保険は広義の意味では健康(介護)保険、厚生年金保険、労災保険、雇用保険を指しますが、本記事では
健康保険と厚生年金保険を社会保険と言うこととします。
Contents
社会保険とは?
社会保険とは、国民生活の「安心」を支えるために、国・都道府県・市町村が行っている「社会保障」のうちの一つです。
社会保障には、社会保険・社会福祉・公的扶助・保健医療と公衆衛生の4項目が含まれており、「社会保険」は、年金・医療・介護の観点から国民の生活を守るために作られた仕組みです。
そのため以下に当てはまる企業は、社会保険に加入する義務があります。
・すべての法人事業所
・従業員を5人以上雇用している個人事業所
企業を立ち上げたとき、または上記に当てはまった時点で社会保険への加入が必要です。
正しい手続き方法を知り、従業員にも社会にも信用が得られる会社作りをしましょう。
社会保険に含まれているもの
企業が加入する「社会保険」には、以下が含まれています。
健康保険 |
病気やケガをしたときに、誰でも治療が受けられるよう、負担する医療費を軽減してくれる制度 |
厚生年金保険 |
老齢・障害・死亡などで所得が減少した場合、および高齢者や障がい者の生活費を、遺族とともに補償するための制度 |
また、初めにお伝えした条件に当てはまる法人事業者および個人事業所は、「労働保険」(労災保険と雇用保険)の加入も同時に義務付けられています。
労災保険 |
業務上および通勤中にケガをした際、治療を受けたり現金を受け取ったりする制度 |
雇用保険 |
従業員が失業した場合に、転職・就職できるよう生活費を支給する制度 |
義務があるにもかかわらず加入しなかった場合、社会保険の場合は年金事務所から、労働保険の場合は労働局から加入指導を受けます。
それでも加入しなければ、未加入期間の保険料が徴収され、強制的に成立手続きが行われるため注意が必要です。
また企業としての社会的信用が落ちるため、早めに手続きされることをおすすめします。
社会保険・労働保険の手続きはいつ行うのか?
社会保険・労働保険の加入手続きは、いつでも良いわけではありません。
従業員が加入資格を得た日を起算として、数日以内に手続きするよう取り決められています。
例えば、社会保険の手続きを行うために必要な【被保険者資格取得届】は、対象の従業員の正式な雇用日から5日以内に管轄の年金事務所への提出が必要です。
一方で労働保険の手続きを行うために必要な【保険関係成立届】は、対象の従業員の正式な雇用日から10日以内に管轄の労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します。
提出する書類により締切日が異なるため、加入資格を持つ従業員を雇用した場合は、書類の提出日について確認しましょう。
社会保険・労働保険の手続き方法
自社が、社会保険および労働保険加入の対象になったとき、または起業して条件に当てはまる場合は、手続が必要です。
手続き自体は窓口での申請や郵送での対応となりますが、今ではインターネットからでも受け付けていますので、いずれかの方法で手続きを行います。
社内周知をする
企業として初めて加入する場合、かつすでに従業員がいる場合は、「社会保険」および「労働保険」へ加入する旨を必ず周知して理解を得ます。
従業員の給与や受けられる補償に関わってくることでもあるため、できるだけ説明会や面談などを行い、確実に全従業員に伝えて理解が得られるようにしましょう。
従業員から理解を得るには、以下のポイントを伝えることがコツです。
・法律により、社会保険・労働保険に加入する義務があること
・社会保険・労働保険に加入するメリット
・(従業員から要望があれば)労働時間の調整について
加入義務があることのみ伝えてしまうと、同意を得られない可能性もあるため、これまで従業員が支払っていた国民健康保険料や国民年金保険料が企業と折半になるなど、メリットも伝える必要があります。
必要書類を提出する
社会保険・労働保険の加入対象者を雇用している場合は、社会保険なら【新規適用届】や【被保険者資格取得届】を提出し、労働保険なら、初めに【保険関係成立届】と【概算保険料申告書】を提出する必要があります。
労働保険の中の「雇用保険」に加入する場合は、さらに【雇用保険適用事業所設置届】と【雇用保険被保険者資格取得届】の提出が必要です。
またそれぞれ書類の概要は以下の通りです。
保険の種類 |
必要な書類 |
入手先 |
提出先 |
締め日 |
社会保険 |
被保険者資格取得届 |
・管轄の年金事務所 ・日本年金機構の公式サイトからダウンロード |
管轄の年金事務所 |
従業員が加入資格を得た日から5日以内 |
労働保険 |
・保険関係成立届 ・概算保険料申告書 |
・管轄の労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク) ・厚生労働省のサイトからダウンロード |
管轄の労働基準監督署または公共職業安定所(ハローワーク) |
・保険関係成立届 従業員が加入資格を得た日から10日以内 ・概算保険料申告書 従業員が加入資格を得た日から50日以内 |
・雇用保険適用事業所設置届 ・雇用保険被保険者資格取得届 |
・公共職業安定所(ハローワーク) ・ハローワークインターネットサービスからダウンロード |
公共職業安定所(ハローワーク) |
従業員が加入資格を得た日から10日以内 |
社会保険と労働保険の加入に必要な書類は、指定された提出先へ、郵送・窓口へ持参・電子申請のいずれかの方法で提出できます。
また初めて雇用保険に加入する場合は、【雇用保険適用事業所設置届】と【雇用保険被保険者資格取得届】が必要ですが、2人目以降は、1人1枚ずつ【雇用保険被保険者資格取得届】のみ提出します。
従業員へ配布物を渡す
手続きが完了したら、提出先から配布物が送られてくるため、従業員へ忘れずに渡します。
それぞれ以下の配布物があります。
社会保険 |
・健康保険証 |
雇用保険 |
・雇用保険被保険者証 |
※労災保険は、企業が加入するための制度のため、配布物はありません。
従業員が退職するときの手続き方法
社会保険・労働保険に加入していた従業員が退職すると、条件から外れるため資格を失います。
そのため、退職時にも必要な手続きを行い、資格を喪失した状態にする必要があります。
社会保険で必要な手続き
退職する従業員の、【被保険者資格喪失届】を管轄の日本年金機構へ提出します。
1枚のみ提出すれば、健康保険と厚生年金保険が、同時に手続きが完了します。(企業健保加入の場合は日本年金機構と加入健保とで別に提出するケースもあります)
また手続きには、従業員が退職した日を起算日として、5日以内の届け出が必要です。
電子申請・郵送・窓口へ持参のうち、いずれかの方法で受け付けてくれるため、締め日までに提出できるか心配な方は、電子申請を利用しましょう。
手続き後に、退職する従業員から【健康保険証】を回収します。
雇用保険で必要な手続き
退職する従業員の、【雇用保険被保険者資格喪失届】と【離職証明書】を管轄の公共職業安定所(ハローワーク)へ提出します。
書類は、従業員が退職する日の翌々日から10日以内に提出する必要があるため、早めに準備しましょう。
また【離職証明書】には、退職する理由を記載する欄があります。
従業員と企業側で退職理由が異なった場合は、公共職業安定所(ハローワーク)から調査が入る場合があるため、正確に記載しましょう。
社会保険・労働保険はパート・アルバイト社員も対象?
労働保険は、正社員・アルバイト・パート社員など雇用形態に関わらず、従業員を一人でも雇用する場合は加入が義務付けられています。
一方で社会保険は、2022年10月から、従業員が101人以上在籍している企業のみ一部のアルバイト・パート社員も加入するよう義務付けられました。
さらに2024年10月以降は、従業員数が51人以上の場合、一部のアルバイト・パート社員も加入義務が発生します。
このように加入義務に当てはまる条件が拡大しているため、たとえ現在従業員数が少なくても、今後は当てはまる可能性があります。
加入対象者は「一部の」アルバイト・パート社員とお伝えしましたが、義務化に当てはまる労働条件は以下の通りです。
・週の所定労働時間が20時以上
・月額の給与が8.8万円以上
・2か月を超えて雇用する見込みがある
・学生ではない
上記4つすべてに当てはまるアルバイト・パート社員が加入対象になるため、自社が該当するか確認しましょう。
該当する場合、正社員と同様の手続きを行います。
特にアルバイトの人数が多い場合は、締め日までに手続きができるよう早めに準備をしましょう。
まとめ
企業は、法人事業所または5人以上(労働保険は1人以上)の常勤従業員を雇用している個人事業主のどちらかに当てはまる場合、社会保険および労働保険に加入する義務があります。
手続きは、主に必要書類を管轄の施設へ送付します。
多くの書類は、インターネットでダウンロードしてパソコンで打ち込み、そのまま電子申請もできます。
ただし書類提出の期限があるため、できるだけ早めの準備が必要です。
また今後は、条件を満たす場合、さらに一部のアルバイト・パートも加入義務が発生します。
2024年10月以降は、従業員数が51人の場合に加入義務が発生するなど、当てはまる条件が拡大します。
社会保険・労働保険に関して、自社が適正に運用されているか、改正の有無や制度の更新など、常に把握しておきましょう。