マイクロフィルムのいろは
2023/02/28
コンピュータの世界ではAIの技術の向上、自動車はEV?PHEV?HYBRID?などと日々目まぐるしい変化をしていく時代の中で、平成生まれの方、ましてや今後令和生まれの方にはほとんど馴染みないであろう『マイクロフィルム』が今回のテーマです。
ご存じの方もいらっしゃると思いますが、書籍や文書などの資料を専用のカメラを使用して、フィルムに縮小撮影したものが『マイクロフィルム』であり、実際に撮影された内容を確認しようと肉眼でトライしても判読することは困難で、専用の機器を使用し拡大したもので確認をしたり、紙に印刷し復元したもので閲覧をします。
(Computer出力をマイクロフィルムにダイレクト出力するComputerOutputMicrofilm=Comもありますが本編では対象外とします)
マイクロフィルムの歴史としては、約2世紀前にイギリスの科学者により発明されており、日本では戦後、研究者たちが海外の文献を活用する方法としてマイクロフィルムが使用されていたとのことです。近年では、国立国会図書館をはじめとする官公庁や地方自治体、製造業、金融業など様々な業界で今も保有されています。
デジタル化が進む中で、現在でもマイクロフィルムを使用するメリットとして、2点あげることができます。
- 100年単位の長期保存に耐えること。
- 可視情報をそのまま記録するため見読性の維持が期待できること。
適切な保存条件下であれば、期待される寿命は500年とも言われております。
しかし、いかに優れた媒体でも、保存するための基礎的な情報を知り、適切に保管環境を
管理し、利用するときの取扱いに注意しなければ『劣化』が生じ長期保存が出来なくなってしまうなど、繊細な部分を持つのがデメリットでもあります。
マイクロフィルムの劣化の例としては3点あげられます。
- 酢酸臭がする
- カビが生えてしまっている
- べたべたに溶け出してしまっている
これらは、保管環境によって生じる劣化であり、保管環境の温湿度が適切に管理されていないと、空気中の水分によりTACベース(フィルムの基底となる材料)が加水分解して酢酸が生じ、酢酸臭、べたつき、白い粉の析出、波打ち、リールの溶解等を招きます。
一定のレベルを超えると劣化が急激に進み、一度劣化したフィルムを元に戻すことは困難です。修復する技術も開発されていますが、元のフィルムを長く保存できるわけではなく、フィルムの複製ができる程度の復旧にとどまります。また低湿度ではひび割れ、高湿度ではカビが発生する恐れがあります。
画像:公益社団法人 日本画像情報マネジメント協会 マイクロフィルム保存の手引きより
https://www.jiima.or.jp/wp-content/uploads/basic/Microfilm_hozon.pdf
1980年代にはTACベースからPETベースに変わり劣化しにくく強度があり厚さ半分のフィルムも製造され収納能力が倍のフィルムも登場しました。
いずれにしましても自社で保管すると、JIS規格で規定されている保管環境を用意するのも一苦労ではないでしょうか。
弊社では、倉庫内の温湿度管理された部屋があり、数多くのマイクロフィルムを保管している実績があります。また、過去にマイクロフィルムを作成していた実績もあり、マイクロフィルムを取り扱うノウハウも備わっております。
また、マイクロフィルムの劣化に対しての解決方法としては、マイクロフィルムをスキャニングして電子化するという手段があります。
電子化することにより、マイクロフィルム本体を頻繁に取り出すことが無く、外気に触れることを避けることで安定した環境で保管することができ、仮に劣化の症状が進行しているものでも、それ以上の劣化を抑制することも期待できます。
電子化した後は、パソコン上での検索や閲覧、印刷などもすることができ、データへのアクセスのしやすさという点でもメリットあります。
長期保存が期待できるマイクロフィルムですが、劣化のリスクも持ち合わせています。適切な保管環境や電子化といった対策で情報資産を守りましょう。