わかりやすく説明!電子帳簿保存法

2022/02/22

2022年1月に改正された電子帳簿保存法が施行されました。すでに「すましょの鍵」では速報として概要を説明してきましたが、今回は、この改正の全体についてわかりやすく説明をしていきます。

2020年12月25日の記事:https://xn--ruq167cnto080a.com/media_key/2478/

2021年12月23日の記事:https://xn--ruq167cnto080a.com/media_key/3769/

電子帳簿保存法とは

「電子帳簿保存法」とは、国税関係帳簿書類を電子データとして保存する際の要件や、電子的に授受した取引情報の保存方法などについて定めた法律です。 決算書類や各種帳簿、紙で受領した領収書などは紙での保存が原則なのですが、この法律により一定の要件を満たせば電子データでの保存ができるようになっているのです。電子データは電子データで保存し、紙は紙か電子データで保存する、という考え方です。

「電子帳簿保存法」はあくまで国税に関連する文書に関する法律です。保存が義務付けられている書類全般の電子化を認める「e-文書法」と混同しないように注意が必要です。

何故、改正されるの?

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この法律は過去に何度も改正がされています。
主な改正は以下のようなものでした。
1998年:電子帳簿保存法開始
2005年:スキャナ保存制度開始。電子署名が必要かつ3万円以下の国税関係書類に限定
2015年:3万円未満の金額基準撤廃、電子署名も不要に
2016年:デジカメやスマホで撮影されたデータも可能に。証憑を受け取った本人がスキャンする場合は自署が必要
2019年:過去分の重要書類も税務署に届出すれば対象に
2020年:コーポレートカード等キャッシュレス決済の場合は領収書不要に

 

何故、これだけ変更がなされるのでしょうか。それはなかなか電子化の導入が進んでいないからです。
税金に関することですので、できるだけ正確にかつ不正が発生しないよう要件を厳しくしていたために、電子化に対する障壁が多すぎたと言われています。更に電子帳簿保存法に対する認知度もかなり低い状況でした。

 

2021年11月に株式会社Freeeが実施した調査があります。これによると、電子帳簿保存法の認知度は43.1%で、半数以上の人が知らないと回答しています。また、認知している人の中で何らかの対応もしくは検討をしている割合は大企業では65%程度となっていますが、中堅企業や小規模企業だと5割未満です。

https://corp.freee.co.jp/news/20211202anke-to.html

つまり企業全体の2割程度しか電子帳簿保存法への対応ができていないことになります。

 

できるだけユーザーにとって利便性の高い法律にするため、変更(改正)を繰り返しているのです。今回の改正では利用者にとってメリットの大きな変更がありますので、これから導入する企業も増加することが想定できます。

電子帳簿保存法の概要

電子帳簿保存法は、「電子帳簿等保存」、「スキャナ保存」、「電子取引」という大きな3つのパターンで成り立っています。
「電子帳簿等保存」とは、紙ベースの資料を基に会計ソフトなどを利用して作成される帳簿や決算書のデータを保存するパターンです。
「スキャナ保存」とは、取引先などから紙で送付されてきた伝票や請求書などをスキャンしてデジタルデータ化するパターンです。
「電子取引」とは、一切、紙を介することなくすべてがデジタル情報で送付されてくるパターンです。例えばECサイトなどでの取引などを考えてもらえればわかりやすいと思います。
  下の図はこれらのパターンをわかりやすくしたものです。

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では、具体的にどんな帳票類や文書がこの3つのパターンにあたるのでしょうか。大きく分けると「経理関連の文書」、「決算関連の文書」、「取引関連の文書」に分けられます。下の表を見ていただくと、それぞれの関連文書がどのパターンに当てはまるのかがお分かりになるでしょう。

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これを見ると簡単に導入できそうな気もしますが、電子帳簿保存法を導入して業務効率化を図ろうとしても、パターンのそれぞれに細かな規定があり、その規定を守ろうとすると逆に手間がかかってしまう場合もありました。より電子帳簿保存法を導入しやすくするために今回の改正が行われたのです。

電子帳簿保存のための条件

1)電子帳簿保存

電子帳簿保存は税金に関する非常に重要なものになります。国税庁では保存されるデータに「真実性の確保」「可視性の確保」を求めています。つまり改ざんなどがなされないこと、確実に見ることができるということが重要なポイントとなっています。 対象の文書は経理関連帳簿、決算関連書類に加えて、自社がPCで作成して発行する取引関連書類(契約書や請求書など)が対象となります。

 

2)スキャナ保存

紙で発行された請求書や領収書などの取引関係の文書はスキャンしたデータで保存することができます。このスキャン保存には細かなルールが決められています。このルールを守ることは結構手間がかかるので、導入に躊躇する会社も多いようです。具体的には11項目のルールがあり、タイムスタンプの付与、入力期間の制限、適正事務処理要件(相互牽制)といった真実性の確保には注意が必要です。
これらの内容の詳細は国税庁のウェブサイトに具体的に記載されているのでご確認ください。
スキャナ保存の適用要件【基本的事項】問12|国税庁

領収書の書類保管について詳しくはこちら

 

3)電子取引

電子取引で発生する取引情報についてもいくつかの保存要件が決められています。
「保存システムの概要や説明書などの備え付け」、「見読性の確保」、「検索機能の確保」ということに関して次のように対応するようにしています。
①タイムスタンプが付された後の授受
②授受後遅滞なくタイムスタンプを付す
③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステムまたは訂正削除ができないシステムの利⽤
④訂正削除の防⽌に関する事務処理規程の備え付け

電子取引関係の適用要件【基本的事項】問9|国税庁

今回の改正で何が変わったのか?

今回の改正では帳簿や対象になる文書の電子化の導入をより容易にするために改正されました。各種の規定を緩和し、業務の効率化や煩雑さを減少させることを目的としています。尚、緩和する部分もあるのですが、一部は厳しくなっている部分もあるということを理解しておく必要があります。

 

具体的に何が変わったのかを説明していきます。大きな変更点についてまとめると下の図のようになります。

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◆税務署への事前承認が不要になりました

これまで電子帳簿等保存および文書のスキャナ保存をするためには、運用開始の3カ月前までに税務署長へ承認申請書を提出し、承認を得る必要がありました。今回の改正によって事前承認は不必要となりました。つまりスキャナや保存システムなどを導入したらすぐに電子保存ができるようになりました。

◆検索要件が簡素化されました

検索機能についても要件が緩和され、改正後は「取引年月日」「取引金額」「取引先」の3項目のみが検索機能の必須項目となりました。また、税務署からのダウンロード要請に応じられるようにしておけば、日付や金額の範囲指定により検索できること、2つ以上の任意の項目を組み合わせて検索できること、という要件は不要となりました。

◆電子取引データの保存ルールが明確になりました

2年間の猶予期間はありますが、電子取引による証憑類を紙で保存することは禁止となりました。 改正前は電子取引に関係するデータを紙に出力し書面で保存することも容認されていましたが、改正後には紙保存は廃止され、データで保存することが必要になります。
例えばメールに請求書や契約書が添付されることもありますが、こうした取引書類のデータは電子取引データのまま保存する必要があります。

◆タイムスタンプの要件が緩和され、適正事務処理要件が廃止されました

この要件が電子帳簿の導入の大きな障害になっていたといっても良い内容でした。これらが廃止もしくは緩和されたことで、電子帳簿の導入が促進されると期待されています。

 

又、適正事務処理要件ですが、改正前はスキャナ保存する場合、適正事務処理要件に従った社内の入力体制があらかじめ整備されていなければなりませんでした。適正事務処理要件とは、2人以上で入力する体制(相互牽制)や、入力したデータが適正かどうかチェックする体制(定期検査)、万が一不備が見つかった場合に再発を防止する体制で処理することでした。 この体制作りは電子帳簿保存法を導入する大きな阻害要因の一つだったのですが、これは廃止されました。

要件が緩和された一方、罰則も強化

いくつかの改正により、電子帳簿保存を導入しやくなってきています。導入しやすくなった半面、不正が発覚した場合、重加算税に+10%という厳しい措置が適用されるようになります。
重加算税とは、意図的な虚偽申告が行われた場合に、基礎となる税額に対して課せられる附帯税のことです。過少申告や不納付の場合は35%、無申告の場合は40%の税率となっています。
電子保存された事項に対して不正行為が発覚した場合、通常の重加算税からさらに10%加重されることになりました。

まとめ

令和4年(2022年)1月に施行された電子帳簿保存法についてまとめてきました。これから活発化すると思われる電子帳簿保存法に理解が深まれば、業務効率化やコストの削減につながっていくでしょう。

 

国税庁でも紙の削減、DXの推進という観点から積極的に推進をしているようです。国税庁が作成した告知がありますので、下記リンクをご覧ください。
はじめませんか、帳簿書類の電子化|国税庁

 

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この記事は2022年2月22日時点の記事です。

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